奨学金の返済金額と返済期間についてシミュレーション

奨学金の毎月の返済額とその期間についてシミュレーションしてみました

4年制大学の場合(貸与期間48ヵ月で計算)
第一種
進路 貸与月額(貸与総額) 月々の返済額 返済期間
国立(自宅) 45,000(216万円) 12,857円 14年(168回)
国立(自宅外) 51,000(244万8千円) 13,600円 15年(180回)
私立(自宅) 54,000(259万2千円) 14,400円 15年(180回)
私立(自宅外) 64,000(307万2千円) 14,222円 18年(216回)

 

第二種
貸与月額 貸与総額 月々の返済額 返済期間
月額6万 288万円 15,647円 16年(192回)
月額8万 384万円 16,855円 20年(240回)
月額10万 480万円 21,069円 20年(240回)
月額12万 576万円 25,282円 20年(240回)

※利率は0.5%の固定で計算

 

短期大学や専門学校の場合(貸与期間24ヵ月で計算)

 

第一種
進路 貸与月額(貸与総額) 月々の返済額 返済期間
国立(自宅) 45,000(108万円) 7,500円 12年(144回)
国立(自宅外) 51,000(122万4千円) 8,500円 12年(144回)
私立(自宅) 53,000(132万5千円) 9,201円 12年(144回)
私立(自宅外) 60,000(144万円) 9,230円 13年(156回)

 

第二種
貸与月額 貸与総額 月々の返済額 返済期間
月額6万 144万円 9,557円 13年(156回)
月額8万 192万円 12,744円 13年(156回)
月額10万 240万円 13,874円 15年(180回)
月額12万 288万円 15,647円 16年(192回)

※利率は0.5%の固定で計算

 

※参考:奨学金貸与・返還シミュレーション JASOOより
https://simulation.sas.jasso.go.jp/simulation/

 

借入できる奨学金の額は以下の通りです。

 

奨学金の返済金額と期間
※私立大学の医学・歯学の課程は4万円増額可能(12万円+4万円=月額16万円)
※私立大学の薬学・獣医学の課程は2万円増額可能(12万円+2万円=月額14万円)

 

引用:大学での申込資格 JASOO

 

第二種の利息については以下をご覧ください。
奨学金の利子(利率)ってどのくらい?最近の動向について

 

奨学金の申し込みから返済(完済)までの大まかな流れ

奨学金の申し込みをして、実際に給付が始まるのが大学1年生の5月〜6月になります。そこから毎月奨学金が振り込まれることになります。4年生の卒業時(3月)が貸与終了月となります。3月に卒業してそこから翌月の7ヵ月目から返済がスタートします。ようは3月に卒業して10月から返済が始まります。そこから14年間〜20年間、毎月1万円〜3万円が引き落とされます。

 

たとえば第二種で月額8万円を4年間借りるケース(年0.5%、固定、人的保証)では貸与総額は384万円で返済期間20年(240回払い)で毎月の返済額は16,855 円となります。

 

20年間毎月16,855円が銀行口座から引き落とされ続け、やっと完済するということです。たとえば、2023年4月(18歳)に大学入学して、4年間奨学金を貸与して、2027年3月(22歳)に卒業(貸与終了)、2027年10月から返済スタートして、そこから20年間毎月返済を続ければ、2047年(42歳)に完済するということです。

 

奨学金はいくらまで借りたら無理なく返済することができる?

奨学金を借りる際に「いくらぐらいまでなら返すことができるのか?」という問題があります。

 

奨学金は基本的に毎月の返済額は1万〜3万になっており返済期間も14年〜20年と長いので、よっぽどのことがない限り完済できないということはありません。もし一時的に返済できない時はすぐに返済期間の猶予の申請をすれば1年間は返済が止まり、利息もストップします。これは最大10年間利用できます。

 

本人が死亡したケースや重度の怪我や病気で働けなくなった場合は全額免除となります。このような救済処置も用意されています。

 

ようは卒業後に仕事に就いて毎月コツコツと返済をし、もし失業や病気や怪我など一時的に収入が途絶えた時は返済期間の猶予申請をして返済と利息を止めて生活を立て直し、再び仕事に就けたらまた返済をコツコツと続けていくということをすれば、返せなくなることはありません。

 

奨学金が返せなくなった方というのは、ずっと無断滞納を続けていて、返済期間の猶予の申請もせず、一括繰上げ請求(9ヵ月以上の滞納で実際に書留郵便が家に届き訴訟を起こされます)をされた方です。

 

何カ月もずっと無断滞納をして連帯保証人に請求が回るというケースもあります。

 

原則は、きちんと仕事に就いて毎月返済して、もしもの時は返済期間の猶予申請をすれば、奨学金は返せなくなるということはないのです。14年〜20年かけて返済し、しかも最大10年の返済期間の猶予も利用できるのですから、返せなくなることはありません。しかし、卒業後の生活に大きな負担になるのは事実です。別問題としてそこを考えていきます。

 

毎月1万〜3万が自動的に14年〜20年近く口座から引き落とされ続けるのですから、その分使えるお金は減ります。20代後半になり、いよいよ結婚も考える歳になると、奨学金の負担が大きく響いてきます。奨学金の負担がある中で子供を作るというのはとてもリスキーだからです。

 

この点はしっかりと考える必要があります。日本学生支援機構の緻密な返済プランによって生き殺しのような形で、毎月少額を何十年もかけて吸い取られていくのです。

 

日本政府は全国民から高い税金を徴収(全収入の10%〜最大50%程度)しているのですから、本来はその徴収したお金を子供達の未来のために高等教育(大学など)にどんどんと税金を使い、大学費用を安くする、もしくは給付型(貰える)奨学金をもっと増やして支援していくべきです。

 

それが、高い税金を徴収しておいて、税金は高等教育には殆ど使われないため学費は高騰しており、それを借金という形で子供達に背負わせ、その返済を20年かけてずっと行わせるのです。百歩譲ってまだ無利息ならわかりますが、多くが第二種(有利子)となっています。しかも利息や保証料で利益を出しています。

 

役人の頭の中にあるのは、自分達の天下り先である大学を税金で生かす、ただそれだけな気がします。

 

4つのケースで返済金額と期間をシミュレーション

大まかに以下の4つのケースで返済金額と期間をシミュレーションしてみました。

 

@自宅通学の国立大学(4年間)・・・総額2,160,000円(第一種の月額4万5千円)
→返済期間は14年(168回払い)で、毎月の返済額は12,857円です。

 

A自宅通学の私立大学(4年間)・・・総額3,840,000円(第二種の月額8万円)
→返済期間は20年(240回払い)で毎月の返済額は16,855円です。
※第二種の年利は0.5%の固定で計算

 

B自宅外通学の国立大学(4年間)・・・総額6,288,000円(第一種月額5万4千円と第二種月額8万円の併用)
→返済期間は20年(240回払い)で毎月の返済額は27,055円(第一種10,200円+第二種16,855円)です。
※第二種の年利は0.5%の固定で計算

 

C自宅外通学の私立大学(4年間)・・・総額7,872,000円(第一種月額6万4千円と第二種月額10万円の併用)
→返済期間は20年(240回払い)で毎月の返済額は33,869円(第一種12,800 円+第二種21,069円)です。
※第二種の年利は0.5%の固定で計算

 

※参考:奨学金貸与・返還シミュレーション JASOOより

 

上記ではあくまで大学4年間でかかるすべての費用を奨学金でまかなった場合のケースです。たとえば毎月いくらか仕送りをしてもらえるとか、自分でアルバイトで毎月いくらか稼いでそれを生活費にするなどのケースでは、奨学金の負担を軽くすることができます。

 

国立大学に通うか私立大学に通うか、自宅通学か自宅外通学(一人暮らし)かで大学4年間でかかる総費用は異なります。大学費用は以下の画像の通りです。
大学4年間でかかる総費用について
引用:奨学金ガイドブック JASOO(http://oedo-h.metro.tokyo.jp/wordpress/wp-content/uploads/2020/04/%E5%A5%A8%E5%AD%A6%E9%87%91%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF.pdf)

 

一番お金がかからないのが自宅通学(自宅から通える)の国立大学、公立大学、県立大学、市立大学です。これらはそもそも学費が安い(年50万円程度)ですし、自宅通学ですので、その下宿費用がかかりません。

 

次にお金がかからないのが自宅通学の私立大学です。私立大学は4年間合計で学費が約400万円程度かかります。学費は高いのですが、自宅通学では1人暮らしの必要がないので、学費以外のお金は殆どかかりません。交通費(定期券を購入)や大学での昼食代(学食を利用できるので安い)程度です。あと教科書代もかかりますが、前期なら前期分だけ揃えればよいので、そこまで大きな出費にはなりません。

 

自宅外通学の国立大学は案外お金がかかります。そもそも国立大学で4年間で約250万円(入学金を含む)ほど学費がかかります。大きな出費となるのが一人暮らしの費用です。

 

賃貸の新規契約をするのに敷金礼金や家具をそろえるのに約50万円はかかります。さらに毎月家賃と光熱費と食費がかかります。家賃は安い場所に住んでも月4万円はかかります。

 

あと食費は昼は学食で済ませられるのでよいですが、朝と夜は自分で用意しないといけません。一人暮らしの費用というのがとても大きな出費となるのです。自宅外通学の国立大学の費用をすべて奨学金でまかなう場合、約600万円は必要になります。第一種を借りられる方はそれを利用し、足りない分は第二種を利用します。第一種を利用できない方は第二種でまかなう必要があります(最大で月額12万円まで)

 

一番お金がかかるのが自宅外通学の私立大学です。4年間トータルで文系で約800万、理系だと約1千万円かかります。

 

これをすべて奨学金でまかなう場合、第一種と第二種を併用すれば可能ですが、第二種だけだとすべてまかなうことができません。このケースでは国の教育ローンも利用します。

 

そもそもこれだけの多額のお金を払ってその私立大学に通って、借りた分を返済できるのか考える必要があります。年功序列や定年退職できる時代ではなく、大卒という肩書きがあれば一生安泰(高収入で安定した企業に勤められる)という時代ではありません。ブラック企業の存在もあり、若年労働者が長時間労働低賃金でうつ病を発症するケースもあります。

 

返済でいうと、月額約3万円を20年間毎月続けなければいけないのですから、負担は非常に重たいです。社会に出ればわかるのですが、額面に対して2〜3割差し引かれた金額が手取りとしてもらえます。自宅外通学の私立の場合はそのままその地域で就職するケースが多いと思います。

 

社会人になっても一人暮らしを続ける場合は継続して家賃と光熱費と食費がかかります。それらの生活費を差し引いて、そこから毎月奨学金分も返済する必要があります。

 

たとえば額面が25万円でも、手取りは20万円程度になります。その中から生活費を捻出したり奨学金を返済していく必要があるのです。そもそも本人がそういった生活を望んでいるのか、結婚のことも考えると、厳しい生活と言えます。

 

奨学金の返済をする時「実家暮らし」か「1人暮らし」かで返済スピードが大きく違います。実家暮らしなら家賃光熱費食費が浮きますから、いくらでも貯金ができる状態です。卒業から3年以内での繰り上げ完済も十分可能です。

 

一人暮らしの場合、家賃光熱費食費がかかり、その中で返済を続けないといけないため、奨学金の返済は厳しくなります。自宅外通学の私立だと卒業した時点で多額の借金を背負いますから(場合によっては800万円以上)、それを返済できるのかどうかです。

 

もし本人が返済できなくなった場合、人的保証にしていると連帯保証人に請求が向かいます。連帯保証人も払えないと保証人に請求がいきます。連帯保証人を母親、保証人を祖母に設定している場合、3世代にわたって奨学金の負の連鎖になるのです。

 

ただ、関東や関西の私立大学では地方出身者を対象とした大学独自の奨学金制度を設けているケースがあります。たとえば地方出身者限定で学費が半額になったりなどです。
高校の成績が優れており、大学独自の地方出身者対象の奨学金の条件に合う場合は、それを利用して私立大学に通うのはありです。大学独自の奨学金については以下のリンクの記事の真ん中あたりで紹介しています。
奨学金の種類と民間団体の給付型(貰える奨学金)一覧について

 

金銭面を考えると、自宅通学できる国立や公立大学があり、自分の学力でそこにいける方はそこにいくのが一番よいです。それか自宅から通える私立大学がある場合、そこに通う方が、金銭面で考えると一番負担が少ないです。

 

奨学金の負担をどのように軽減すればよいか?

大部分は大学選びによって決まります。自宅通学のできる国立(公立、県立、市立)大学や私立大学に通うことで下宿代がかからないので大きく費用がかかることはありません。

 

自宅外通学の場合は国立大学までと決めるのもありです。

 

自宅外通学の私立大学はあまりにお金がかかり、それを奨学金でまかなうというのは、将来の負担が大きいです。奨学金はただの学生ローンです。借金ですので、借りた分は利息を付けて返済しないといけません。そこを考える必要があります。

 

奨学金の負担を軽くする方法ですが、上記で説明した大学独自の奨学金や民間団体の奨学金を利用できる方はそういったものを利用するのもありです。

 

日本学生支援機構は貸与型だけでなく給付型の奨学金も開始しています。もし給付型の条件に合うかたは利用すべきです。給付型については以下の通りです。
給付型奨学金の2つの利用条件と申し込みについて

 

あとは在学中にアルバイトなど行い、コツコツと貯金して、繰り上げ返済するというのがよいと思います。

 

在学期間中は利息は発生しないので、その期間を利用します。上記で説明した返済期間通り14年〜20年かけて返済していては、発生利息は大きくなります。
上記の例ではすべて人的保証という想定でしましたが、もし機関保証を選んだ場合、保証料も月額数千円ほど発生します。

 

これらは返済期間を短縮すればするほど、その分浮くので、在学期間中はアルバイトをする、返済がスタートしたらボーナスを利用して繰り上げ返済をする、というのがよいと思います。繰上返済のコツについては以下をご覧ください。

 

奨学金繰り上げ返済で得するケースと損するケースについて