奨学金が返せない

奨学金が返せない時の3つの救済制度について

日本学生支援機構の奨学金が返せない時の対処法について解説します。返済できないといっても、様々な状況があると思います。

 

減収や病気やケガ、失業中などで一時的に返済できないケースがあると思います。その他にあまりにも奨学金の額が大きすぎて今の収入では将来的に返済できないケースもあります。それぞれの救済処置としては以下のようになります。

 

・経済困難(年収300万以下)や減収(年収300万以上であっても、今年に入って収入が減ったケース)や傷病(病気やケガで一時的に働けない)や失業等で一時的に返せない
→返済期間の猶予制度や減額返還制度を利用する

 

・病気や怪我で完全に働けない状態になった(死亡を含む)
→返還免除の申請をする

 

・奨学金の額が大きすぎて長期的な返済の目途が立たない
→コツコツ繰り上げ返済か自己破産で借金を0に戻す

 

このようになります。それぞれ今置かれている状況で適切な救済処置を選ぶ必要があります。

一時的に奨学金を返せないケース

一時的に返済できないという状態の方は返済期間の猶予を申請するようにします。

 

申請後1年間(12ヵ月)は奨学金の返済が完全に止まります。ようはこの12カ月間は返済がストップし利息も停止し、延滞金も発生しません。ブラックリストにも載らない期間となります。最大10年間申請が可能で、一時的に返済できない方は猶予期間を利用して生活を立て直すようにします。

 

たとえばこの期間にコツコツとお金を貯めて、猶予終了後に貯めたお金で繰り上げ返済をする、という方法もあります。もし返済期間の猶予の適用条件に合わずに申請できない場合は減額返還を利用します。減額返還を利用すると月々の返済額は2分の1(もしくは3分の1)になります。

 

月々の返済の負担を軽くすることができます。減額返還は最大15年間の申請が可能です。ちなみにもし既に何カ月か滞納しているケースでも返還期間の猶予は過去の分を遡って申請が可能です。

 

返還期間の猶予の適用条件ですが「去年の年収はいくらだったか」ということが1つの基準となります。
給与所得者(正社員)の方は年収が300万円以下で利用可能です。給与所得者以外の方(自営業など)ですと年収が200万円以下で利用が可能です。

  • 給与所得者→年間収入金額(税込) 300万円以下
  • 給与所得以外の所得を含む場合→年間所得金額(必要経費等控除後) 200万円以下

この年収に該当する人は経済困難で猶予が可能です。公式HPから「返還期限猶予願」と「チャックシート」をダウンロードして例文を見ながら記入し、あとは添付書類として所得証明書を区役所で入手して添付して、3つを日本学生支援機構に郵送すれば審査してもらえます。

 

もし年収が300万円以上あるケースでも以下の場合なら適用可能です。

  • 減収(去年は年収300万以上あったが今年になって減収して返済できる状態にない)・・・直近3ヵ月の給与明細などを添付
  • ケガや病気で一時的に働けない・・・診断書を添付して郵送
  • 失業中(失業後6ヵ月以内)で返済できない・・・雇用保険被保険者離職票のコピーを添付
  • 生活保護受給中・・・生活保護受給証明書を添付
  • 入学準備中(卒業後1年以内で大学や大学院にむけて入学準備している)

一時的に返せない状態にあり、上記の事由に該当する方は返還期間の猶予を申請しましょう。それで猶予期間を作ることができます。返還期間の猶予の申請手順と書き方と例文については以下をご覧ください。

 

奨学金が返せない時の返還期間猶予の申請方法について

 

もし今の状態で返還期間の猶予にあたるかわかない方は、返還相談センターに電話で相談してみるとよいです。
今の状態を素直に伝えると何らかの形で救済処置を用意してくれる可能性があります。

奨学金返還相談センター

電話:0570‐666‐301(ナビダイヤル)
海外からの電話、一部携帯電話、一部IP電話からは⇒03‐6743‐6100
月曜〜金曜:8時30分〜20時00分(土日祝日・年末年始を除く)

病気や怪我で完全に働けない状態になった(死亡を含む)

本人が死亡したケース、または本人が病気や怪我で完全に働けなくなったケースでは返還免除を利用できます。借りた奨学金は一切返済しなくてよくなるということです。

 

本人が死亡した場合は親族(連帯保証人か保証人)が「奨学金返済免除願」を記入し、死亡記載のある住民票を添付して日本学生支援機構に郵送します。そうすることで奨学金は免除となります。これらの書類は返還相談センターで伝えると郵送してもらえます。

 

本人が病気や怪我で完全に働けなくなったケースでも免除が可能です。日本学生支援機構では以下のようにアナウンスしています。

精神若しくは身体の障害により労働能力を喪失、又は労働能力に高度の制限を有し、返還ができなくなったとき。

引用:死亡又は精神若しくは身体の障害による返還免除 日本学生支援機構(https://www.jasso.go.jp/sp/shogakukin/henkan_konnan/menjo/ippan_menjyo.html)

これについてはハッキリとした免除基準(どのような症状なら免除となるのかについての基準)はアナウンスされていません。もしそういった状況になった場合は返還相談センターにまずは相談し、個別で判断されることになります。もし該当する場合は奨学金返済免除願を郵送してくれ、記入し、添付書類と一緒に提出するという形になります。

 

奨学金を滞納し、放置しているとどうなる?

奨学金を滞納すると以下の流れで督促となり、最終的に一括繰上げ請求をされます。滞納から9ヵ月後に民事訴訟のための特別送達(書留郵便)が家に届くことになります。

滞納後の督促の流れ

1ヵ月目・・・日本学生支援機構から延滞の電話や手紙がくる
2ヵ月目・・・延滞金が発生する(年5%で延滞した日数分発生する)
3ヵ月目・・・ブラックリストに掲載される
4ヵ月目・・・サービサー(債権回収会社)に取り立て業務が委託される
その後は・・・電話での督促や自宅訪問や給与差し押さえや預金差し押さえや連帯保証人に請求が及ぶ
9ヵ月目・・・繰り上げ一括請求される(民事訴訟を起こされ、書留郵便が家に届く)

奨学金は「入口は奨学金、出口は金融」と言われています。最初は日本学生支援機構から注意喚起の電話や手紙だけですが、延滞から4ヵ月目でサービサーと呼ばれる民間会社に債権の回収業務を委託されます。その後は民間ルールに則って取り立てされることになります。たとえばブラックリストに載ったり(消費者金融もクレジットカードも自動車、住宅ローンも利用できなくなる)電話や手紙が頻繁に届いたりなどです。日中の自宅訪問もあり得ます。

 

給与差し押さえについてはそう簡単にされるものではないですが、民間企業が借金取り立てをする時の最終的な手段となります。

 

延滞金についてですが、第二種奨学金の場合は年5%の延滞料が発生します。たとえば残高が200万円の場合、1日で273円、1ヵ月(30日)で8219円、1年で10万円の延滞金が発生します。

 

奨学金を滞納してずっと放置していると、当分は督促の電話や手紙だけ(たまに自宅訪問されることもある)ですが滞納から9ヵ月目で突然、書留郵便が家に届きます。これは特別送達と呼ばれるもので必ず本人が受け取る形になります。その書類には一括繰上げ返済のための民事訴訟を起こしますという内容が書かれています。
これさえも無視してしまうと、欠席裁判となり本当に一括請求の主張が裁判所で通ってしまいます。この書類の中に「督促異議申立書」が入っており、これが和解書となります。

 

当然一括で払えるわけありませんから、ここに「月〇万円の分割返済で和解を求めます」と分割返済の話し合いを希望する旨を書き返送します。そうすると話し合いの場が用意され、双方が納得する額で分割返済する契約となります。もし人的保証にしている方は、本人が払わないとその請求はすべて連帯保証人に向かうことになります。

 

奨学金は多くのケースで連帯保証人と保証人が付くシステムとなっており、本人が払えないと連帯保証人へ、連帯保証人が払えないと保証人へ奨学金の請求がいきます。多くのケースで親族を連帯保証人に設定していますから、親族を人質に取られているようなものです。放置したとしても、一括繰上げ請求されたり、保証人に請求が回ったりします。

 

消費者金融やカードの借金は時効が5年ですが、奨学金は時効が10年です。それも「その月の返済分だけが10年が経過したら時効になる」ということです。たとえば20年の分割返済で契約となっている場合はすべての奨学金の時効が成立するのに30年かかります。さらにサービサーは時効を中断させる手段も持っているので必ず時効が成立するわけではありません。

 

このように奨学金は保証人の問題や時効が長いことから、逃げることは困難なのです。

 

長期的に返済の目途が立たないケース(どうやって返済していけばよいか?)

奨学金の返済方法ですが、とにかくコツコツと返済していくしかありません。

 

奨学金は元本は大きいですが、利息は無利息(第一種)もしくは有利子(第二種)です。利息は高くても年1%程度(上限は年3%)です。たとえば年1%ですと、元本が200万だと1年間に発生する利息は2万円です。

 

返済額も1万〜3万と少額になっています(その分返済期間は10年以上と長いですが)。ですから、とにかくコツコツと返済していくしかありません。

 

前述した返還期間の猶予を利用すると申請後1年間は返済と利息はストップします。一時的に返せない時はすぐに返還期間の猶予申請します。延滞すると延滞金が高いので。猶予を利用できる方はこの期間にコツコツと貯金し、猶予が終了したらこまめに繰り上げ返済します。第一種の場合は無利息ですので、とにかくまめな返済です。第二種は有利子ですので、こまめに繰り上げ返済をしてできるだけ早く完済するのが好ましいです(返済期間が長いとトータルでの発生利息は大きくなるため)。

 

もしあまりにも奨学金の額が大きすぎて返済が困難な場合は自己破産も1つの方法になります。奨学金でも自己破産の対象となります。自己破産をすると奨学金は全額帳消しになります。0に戻ります。

 

自己破産は債務者(本人)の全財産をお金に換えて債権者(日本学生支援機構)に差し出す代わりに、これまでの借金は帳消しになる(0になる)制度となります。ただし当分生活ができるように99万円以下の現金と生活財(テレビや冷蔵庫、洗濯機、クーラー、スマートフォン、ベッド、電子レンジ、食器棚など)は残すことができます。

 

たとえば奨学金は残り400万あり、賃貸マンションに住んでいて、自動車は持っておらず、土地や家も持っていないで、現金20万円しかない状態で自己破産すると、換金する財産は持っていないので簡易的な同時廃止と呼ばれる手続きになります。財産を現金化する手続きはないので、事務的な手続きと裁判官とのやり取りだけで免責決定されます。生活は全くそのままで(今の賃貸に住み続けられます)、奨学金400万円が0円になるということです。奨学金以外にも借金をしている場合、それらも0に戻ります。

 

職場に自己破産をしたことを知られることはありません。

 

たとえば不動産(土地や家)を所有しており、自動車も所有しており、その状態で自己破産するとすべて売却して手放す必要があるため、手続きは管財事件となり、長期化します。

 

奨学金を自己破産する上だ大事になるのが「人的保証(本人が返せない時は連帯保証人が肩代わりする)」か「機関保証(本人が返せない時は保証会社が肩代わりする)」どちらを設定したかです。人的保証は前述しましたが、自己破産すると支払えていない分の奨学金はすべて連帯保証人に請求がいきます。
親を連帯保証人しているケースでは本人が自己破産しても奨学金は親に移動するだけですから恩恵を受けられません。

 

機関保証を選んだ場合は、本人が自己破産すると保証会社がすべて肩代わりをします。このケースでは問題は起きません。

 

保証制度をどちらにしたかで結果は大きく異なります。この点は返還相談センターなどに電話して、現在どちらになっているのか確認する必要があります。

 

自己破産のデメリットは「ブラックリストに10年載る」ことと「官報と呼ばれる政府の広告紙に名前が載る」ことの2つです。

 

官報については、政府が毎日発刊している情報誌のことで、政府の対策や制定された法律や裁判結果が載っています。自己破産は裁判所を介した手続きですので、その結果がここに載ることになります。ただし一般の方がタッチする機会はほとんどありません。毎日のように新しい法律や裁判結果が載っている、その膨大な情報の中に破産者の裁判結果も載るということですが、やはりその中から一般の方が一部の人を特定するのは困難です。社会人は特に仕事に追われて多忙ですので、官報なんて見ません。

 

ブラックリストには10年間載ってしまうので、その期間はクレジットカードは作れませんし、ローン(自動車ローンや住宅ローン)は組めません。喪明け後は問題なく作成できます。